My Sailing Story 03
海上職
H.I.
三等機関士
2023年入社 商船系高等専門学校卒

機関士を目指したきっかけは、中学の頃に商船系の学校のパンフレットが届いて合同説明会に行ったことでした。そのとき船乗りという職業に興味を持ち、その学校に進学。授業や実習を通して知識を深めていく中で、「自分は機関科のほうが性に合っている」と感じ、機関士の道を選びました。
就職活動時は、分社前のENEOSオーシャンの”ENEOS”が決め手になりました。というのも、出身が九州でどこに行くにも車に乗ることが多い地域。ガソリンが欠かせないので、あちこちにENEOSのガソリンスタンドがありました。ガソリンや石油は暮らしに密接に関わり、生活を支え、経済を動かす重要なエネルギー。そのエネルギーを運ぶ船に強く魅力を感じて、入社を決めました。
現在乗っているのは全長230mの低温・常圧式の完全冷却型VLGC(大型LPG船)です。アメリカのヒューストン港に行くことが多いのですが、基本的に行き先は決まっていません。今回も、当初はカナダに向かう予定がアメリカに変更になり、さらにその後は韓国へ向かうはずでしたが直前で日本に変更になるなど、直前まで行き先が変わることも珍しくありません。このように大型LPG船はどこに行くか分かりませんが、そこがおもしろいところ。そして、行く先々で上陸してその土地の空気を味わい、観光できるのが魅力です。新しい土地に行って知らないことを知る楽しさは格別です。

本船は大気圧よりやや高い圧力で飽和沸騰状態の約83,000㎥のLPG[液化石油ガス(-42℃のプロパンガス、-0.5℃のブタンガス)]を積載し、日本だけでなく世界各国に輸送しています。大型LPG船では、船に搭載された大きな再液化装置(圧縮機+凝縮機)を使い、タンク内で気化したボイルオフガスを液体の状態(約300分の1)にすることで大容量のLPG輸送を可能にしています。LPGはガスであり、プロパンガスとブタンガスで性質が違うため、それぞれの性質に合せた管理が必要です。この再液化装置がタンク内の状態を安定させる中核であり、大型LPG船の運航を支える重要な設備です。
私が1、2隻目に乗っていた原油船は荷役で使用する大型のカーゴポンプを蒸気で駆動しているため、蒸気が軸となりボイラー関係のメンテナンスが主でした。船種が変わると、必要な知識もポイントも大きく変わります。乗るたびに新しいことを学ばなければなりませんが、その分大きなやりがいがあります。
船は基本的に海の上にいるので、何か壊れたりしてもすぐに業者を呼んで直してもらうことはできません。私はサードエンジニア(三等機関士)ですが、機械1つを見ていればいいわけではなく、「これもメンテできるように」「あれも修理できるように」と、覚えることがたくさんあります。
うれしい瞬間は、作業がうまくいったときやトラブルを解決できたときです。
あるとき誤作動が起き、自分なりに「原因はここではないか?」と仮説を立てて対処したところ、機器が正常に動き出したことがありました。「勉強した甲斐があった!」と、成長を実感できる瞬間でした。
7:45
朝のミーティング
機関部全員がECR(Engine Control Room)に集まり、当日の作業予定を確認。見回りの結果やいつもと違う箇所なども報告し合う。
8:00
整備作業開始
ミーティングで割り当てられた機関の整備を行う。整備する機関は、主機関(メインエンジン)や再液化装置をはじめ、発電機、ボイラー、ポンプ類など船内すべての機関類に及ぶ。
10:00
休憩
ECRで機関クルーたちとコーヒーを飲みながら雑談し、必要に応じて作業の進捗や困りごとについて報告します。
10:30
整備作業再開
引き続き整備作業を行い、その後ECRに戻り機関日誌に船が消費した燃料の量や、稼働中の機器のデータなど記入する。
12:00
昼食・休憩
船内の食堂で出来たての昼食をいただく。毎日の楽しみ。
13:00
ECRでミーティング
作業の進捗や困ったことがないかを報告し合ってから整備作業再開。
15:00
休憩
集中力が散漫にならないためにしっかり休憩し、最後の業務に備える。
15:30
M0(エムゼロ:夜間に機関室を無人で運転する体制)チェック
夜間運転に備えて、機器の状態を点検。
17:00
作業終了
勤務後はそれぞれの部屋でゆっくり過ごす。

機関日誌とは、主機・補機の圧力や温度、燃料消費量、速力などを記録し、船が安全かつ正常に運航しているかを管理するための重要な記録です。異常があった際の原因究明や、事故発生時の法的争いにおける重要な証拠となります。そのため非常時に総員退船する際、機関長が持ち出す大切なものです。機関日誌への記入は三等機関士の担当業務なので責任を感じながら日々記録していますが、間違えたときは機関長が指摘・指導してくれます。
本船のクルーは日本人とフィリピン人です。フィリピン人クルーは私の拙い英語も分かってくれますし、彼らも日本語をちょっとずつ覚えてくれます。卓球などのスポーツをすると、言語や文化の違いを超えて一気に打ち解けられます。とにかく楽しい時間です。仕事と関係ない部分でいかに楽しく関わっていけるか、いかにスムーズにコミュニケーション取れるかは、仕事自体のやりやすさにつながるので大切にしています。
船にはイベント的なこともいろいろあります。例えば、初めて赤道を越えた人がいたらちょっとしたパーティーをやったり、日付変更線を越えるときブリッジで記念写真を撮ったり。パナマ運河や喜望峰といった歴史的な場所を通過して、「ここをコロンブスが…」としみじみしたこともありました。
あと、航海中は趣味で絵を描いています。電波もいらない、電気もいらない、スペースもいらないので、久しぶりに描いたらハマりました。クルーの顔を描いてプレゼントしています。
機関士志望の方は、「どんな船がいいのか」「内航船か外航船か」と考えているかと思いますが、私は外航船にして正解でした。なぜなら内航船の場合、今日は東京湾、明日は大阪湾と、とても忙しい航海になります。そんななか勤務して勉強して…というのはとても大変です。その点、外航船は、日本からアメリカへ1か月もかけて航海します。外航船では、ほとんどの日が「8時〜17時勤務」。そのあとの時間を自由に使えるため、勉強にも集中できます。勤務でも機械を触るので、しっかり予習・復習もできます。だから、もっと機関士としての勉強をしていきたい、機械を深く知りたい、という人に外航船はとてもよいと思います。
あと外航船は、太平洋の真ん中で何か壊れても自分たちでどうにかするしかない。それも機関士にとっていい緊張感と刺激になっています。
私はいま、ガスエンジニアの勉強をしています。ガスエンジニアとはガスの積み荷に関係することを担当する専門職ですが、機械に詳しいだけではなく、ガスの特性や何をどういった温度・圧力に設定するのか、それをどう調整するのか、どうやって荷役でガスを陸地にあげるかなど、非常に深い知識が必要です。2〜3年後には資格取得を目指しており、日々勉強を続けています。

下船してからは一旦家に帰って家族とくつろいだ後に海外旅行へ行きます。船乗りの大きな魅力は、長い休暇とまとまった収入が得られることです。私は海外旅行に使います!船でフィリピン人クルーとコミュニケーションしているので、多少の英語力は身に付きました。前回はトルコのイスタンブールに行きました。乗船中「次どこに行こうかな」と計画するのも楽しみの1つです。