My Sailing Story 03

海上職

一歩先を考える。
それが、船を支える力になる

T.A.
二等機関士 
2023年入社 水産大学校専攻科 舶用機関課程修了

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船に囲まれた島で育ち、今は世界の海へ

船は、子どもの頃からとても身近な存在でした。
瀬戸内海の小さな島で育ち、通学中にも船を目にするのが当たり前。海で泳いだり潜ったりして遊ぶことも多く、船や海はいつも生活のすぐそばにありました。祖父は元船長で、父と兄も船会社に勤めています。そんな日々の中で、自然と船乗りを目指すようになりました。

その中でも特に惹かれたのが、機関士の仕事です。もともと細かい作業が好きで、機械に触れたり整備したりすることにも興味がありました。
船を機械の面から支える“縁の下の力持ち”のような機関士に惹かれ、自分もこの仕事を目指すようになりました。

そして就職先を考える中で、身近だったENEOSに目が向きました。子どもの頃からENEOSのガソリンスタンドが身近にあり、「いつも目にしているENEOSの油を、自分が船で運べたらおもしろいな」と思ったことが、ENEOSオーシャンを知るきっかけでした。
調べていく中で、この会社では、内航船と外航船の両方に乗る機会があり、原油タンカーやLPG船など幅広い船種を経験できることを知りました。さらに、危険物を運ぶ船を多く運航する会社ならではの高い安全基準や、それを支える乗組員の技術力にも魅力を感じ、ここで自分も学びたいと思い志望しました。

入社後はVLCC(大型原油タンカー)やAframax型タンカー(中型原油タンカー)などを経験。分社の際には、「せっかくなら、まだ乗ったことのない船に挑戦したい」という思いからNYK Energy Oceanを選びました。LPG船では機関士が荷役に関わるガスエンジニアという仕事があることにも興味がありました。
直近で乗船した「SUNNY BRIGHT」は、全長約230mのVLGC(大型LPG船)です。アメリカ・ヒューストンでLPGを積み、メキシコやモロッコなど世界各地へ運びます。小さな島で船を眺めながら育った自分が、いまはその船に乗って世界を行き来している。子どもの頃、憧れを持って眺めていた世界が、いまは自分の仕事の舞台になっていることにも、この仕事の魅力を感じます。

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船を止めないために。
二等機関士として担う責任

現在は二等機関士として、発電機や空気圧縮機などの空気系統、燃料油の管理などを担当しています。船で使う燃料油は粘度が高く、そのままでは使えないため、適切な温度に保ちながら管理します。
燃料を別のタンクへ移したり、積み込む際に「どのタンクに、どのくらい入れるか」を機関長と一緒に考えたりすることも二等機関士の仕事です。

船を止めず、安全に動かし続けるために大切なのが、日々の整備と、その前の準備です。私が仕事で特に意識しているのは、「準備が8割」ということ。
整備を始める前に、機械の構造や過去の整備履歴、必要な予備品、工具、人員、スケジュールまで確認して、作業の流れを頭の中で組み立てます。

船では「足りないから買いに行く」ができません。予備品によっては届くまで半年、1年とかかることもあります。機械を開けてから「交換部品がない」と気づいても手遅れです。実際、ドックでしかできない整備を予定していたのに、予備品がなく作業自体を見送ることもありました。
そういった経験をふまえ、いま目の前にある作業だけではなく、半年先、1年先まで考えて準備する。それが、船を止めないために機関士が担う大切な仕事だと思っています。

1日のスケジュール

7:45

作業前の確認

当日の作業内容やメールを確認。コントロールパネルで担当機器やカーゴタンクの状態もチェックする。

8:00

機関部ミーティング 

その日の作業内容や注意事項を共有する。

8:15

見回り・整備作業開始

機関室内を巡回し、機器に異常がないかを確認。
担当する機器の整備・点検を行う。

10:00

休憩

機関クルーたちとコーヒーを飲みながら雑談し、必要に応じて作業の進捗や困りごとについて報告。

10:30

整備作業再開

引き続き整備作業を行い、その後機関日誌に船が消費した燃料の量や、稼働中の機器のデータなど記入する。

12:00

昼食

船内の食堂で出来たての昼食をいただく。毎日の楽しみ。

13:00

午後の作業開始

作業の進捗や困ったことがないかを報告し合ってから整備作業再開。

15:00

休憩

集中力が散漫にならないためにしっかり休憩し、最後の業務に備える。

15:30

M0チェック

夜間に機関室を無人運転の状態にする前に、機関室内外を見回り、異常がないことを確認。M0とは、機関室を無人で運転する体制のこと。

17:00

作業終了

勤務後はそれぞれの部屋でゆっくり過ごす。

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二等機関士の重要任務、船の“心臓”「発電機」を守る

二等機関士として特に緊張するのが、発電機に関わる仕事です。
船を動かすうえで、まず重要なのはエンジンというイメージがあるかもしれません。もちろんエンジンは欠かせませんが、それをはじめ、船内のさまざまな機器を動かすためには電力が必要です。発電機にトラブルが起きればエンジンの運転にも影響し、特に入出港時には大きなリスクにつながります。
そのため毎日状態をチェックし、異常がないかを確認しています。船全体の運航を電力面から支える発電機は、いわば船の“心臓”ともいえる存在。二等機関士として担う重要な仕事の一つです。

図面で考えたものが、目の前で形になる

入社したばかりの頃は分からないことばかりで、バルブ一つを操作することにも怖さがありました。まず自分で調べ、それでも分からなければ先輩や上司に聞く。その積み重ねで、少しずつ自信を持って作業できるようになりました。

自身の成長を特に実感したのが、中国で行ったドック工事です。環境に関するルールへ対応するため、汚水処理装置まわりの配管を改装する必要がありました。ルールを確認しながら自分で配管のつなぎ方を考えて図面に落とし込み、現場では現地の作業員に「ここをつないで」「ここを切って」と指示を出しました。
改装案を考えたのは約1日、工事は2〜3日ほど。自分が図面上で考えたものが、実際の配管になって目の前に現れたときは本当に感動しました。「自分、エンジニアをしているな」と実感できた、印象に残っている仕事です。

機関士の仕事のおもしろさは、一つの原理を理解すると、その知識を別の機械にも応用できるところです。例えば冷凍装置は、圧縮機、凝縮器、膨張弁、蒸発器という基本的な構成で成り立っています。その原理は食糧用の冷凍機や空調、LPG船の再液化装置、イナートガス発生装置など、船内のさまざまな設備にも使われています。
実際に「なぜ冷えないのか」「なぜ圧力が高くなっているのか」と原因を考えるとき、学生時代に勉強した基礎が生きることがあります。機関士というとエンジンの勉強に目が向きがちですが、冷凍装置について学ぶことも実は大切だと思います。「どうやるか」だけではなく、「なぜそうなるのか」を理解する。一つの原理が分かると、いろいろな機械がつながって見えてくるところがおもしろいですね。

現在は二級口述試験に向けた勉強に加え、二等機関士として担当する機器やガスエンジニアについても学んでいます。
今後は電子制御エンジンや二元燃料船にも乗ってみたいです。2028年にはLPGと燃料油の二つを燃料として使用するエンジンを搭載した新造船も加わる予定なので、新しい技術を身につけ、機関士としてさらに経験の幅を広げていきたいと思っています。

半年は仲間と海へ。3ヶ月は家族のもとへ

外航船員の働き方は、基本的に約6ヶ月乗船し、その後約3ヶ月の休暇を取るサイクルです。配乗の都合によって多少変わることはありますが、この大きなオンとオフの切り替えが、私は好きです。
毎日同じ時間、同じリズムで生活するより、「海で働く期間」と「陸で休む期間」がはっきりしているほうが自分には合っています。長い乗船を終えて家へ帰ると、家族と過ごす時間も毎回新鮮に感じます。そんなメリハリのある生活も、船乗りという仕事の魅力だと思っています。

学生時代は、内航船にするか外航船にするか迷いました。内航船には、頻繁に寄港できる良さがあります。一方で荷役の間隔が短く、とても忙しい。その点、外航船は航海が長いため、勤務後に機械について勉強したり、資格取得に向けて勉強したりする時間を取りやすいと感じています。外国人クルーと一緒に働くことで英語も身につきますし、世界のさまざまな場所へ行けることも外航船の魅力です。

船内では、日本人とフィリピン人のクルーが一緒に働いています。入社した頃、英語は学校で勉強した程度で、決して得意ではありませんでした。本で勉強していても、いざ話そうとすると言葉が出てこない。でも毎日一緒に仕事をするうちに、よく使う表現や相手の言っていることが少しずつ分かるようになり、いつの間にか英語で仕事上のコミュニケーションが取れるようになっていました。
仕事以外では、バスケットボールや卓球をしたり、楽器を演奏したり、毎週テーブルクッキングを楽しんだりします。誕生日にはケーキを囲んでパーティーをすることもあります。仕事以外の時間にクルーと一緒に過ごすことも、仕事中のコミュニケーションにつながっていると思います。

ただ、今年二等機関士になって、クルーとの関係にも少し変化が出てきました。以前は一緒にワイワイ過ごす仲間という感覚が強かったのですが、今は自分から仕事の指示を出す場面も増えています。親しさを大切にしながら、仕事ではきちんと指示を伝える。その距離感は、いままさに勉強しているところです。
機械のことだけでなく、人との関わり方についても、二等機関士になって学ぶことが増えたと感じています。

船は一隻ごとに、搭載されている機器やメーカーが異なるため、乗る船が変われば新たな知識を身につける必要があります。当社で日本人船員が配乗されるLPG船は現在3隻。乗船する船がある程度限られているからこそ、同じ船に再び乗ったときには、それまでに培った知識や経験を生かすことができます。
乗船を重ねるたびに理解を深め、経験を積み上げていけるところは、当社ならではの良さだと思います。以前一緒に乗った人と再び同じ船になることもあり、「この人たちとなら安心して働ける」と思えることも、私にとっては働きやすさの一つです。

下船後は、家族と過ごす時間がいちばん

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下船中は仕事から離れて、家族と過ごしています。
子どもはまだ小さく、乗船中は時差もあるため、ビデオ通話ができるのはタイミングが合うときだけ。だから休暇に入ったら、一緒に遊んだり、買い物へ出かけたり、家で何気ない時間を過ごすことが何よりの癒しです。

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